II-V-I進行のアドリブ入門 — コードトーンから始めるジャズギターフレーズ
著者 Masashi Y.
「スケールは覚えた。でもアドリブになると、スケールを上下するだけになってしまう」
この壁にぶつかる原因の多くは、コードトーンを意識していないことにあります。
スケールの音は7つありますが、その中でコードの響きを決定づけるのは3〜4つのコードトーンです。コードトーンを軸にフレーズを組み立てれば、スケールを上下するだけの単調なソロから脱却できます。
この記事では、ジャズの最も基本的なコード進行 II-V-I を題材に、コードトーン → スケール → テンションの3段階でアドリブの考え方を解説します。
II-V-I とは
II-V-I(ツーファイブワン)は、ジャズで最も頻出するコード進行です。キー = C メジャーの場合:
| 度数 | コード | 機能 |
|---|---|---|
| II | Dm7 | サブドミナント(緊張の準備) |
| V | G7 | ドミナント(緊張のピーク) |
| I | Cmaj7 | トニック(解決・安定) |
「準備 → 緊張 → 解決」という流れがあるため、メロディやソロでもこの流れに沿った音の選び方をすると、説得力のあるフレーズになります。
ステップ1:コードトーンだけで弾く
スケールの前に、まず各コードのコードトーン(R, 3rd, 5th, 7th)だけで弾いてみましょう。
Dm7 のコードトーン
Dm7 の構成音は D, F, A, C(ルート, b3, 5, b7)。指板上でのポジションを確認してみましょう:
G7 のコードトーン
G7 の構成音は G, B, D, F(ルート, 3, 5, b7):
Cmaj7 のコードトーン
Cmaj7 の構成音は C, E, G, B(ルート, 3, 5, 7):
コードトーンだけでもメロディになる
コードトーンは3〜4音しかありませんが、これだけでもメロディアスなラインが作れます。なぜなら、コードチェンジのたびに響きの中心が自然に移動するからです。
重要なのは、コードが変わったときに次のコードのコードトーンに滑らかに繋がる音を選ぶこと。たとえば:
- Dm7 の b7(C)→ G7 の 3rd(B)は半音下降
- G7 の b7(F)→ Cmaj7 の 3rd(E)も半音下降
- G7 の 3rd(B)→ Cmaj7 の R(C)は半音上昇
こうしたコードトーン同士の近い動き(ヴォイスリーディング)を意識すると、コードチェンジが滑らかに聴こえます。
実際にコードトーンだけで作ったフレーズを聴いてみましょう:
ステップ2:スケール = コードトーンの隙間を埋める音
コードトーンだけで弾けるようになったら、次はその隙間にスケールの音を加えます。
ここで重要な発想の転換があります。スケールを「7音のパターンを覚えて弾くもの」と考えるのではなく、「コードトーンの間を繋ぐ経過音」と考えてください。
各コードに対応するスケール
II-V-I の3つのコードはすべてCメジャーキーのダイアトニックコードなので、それぞれのスケール(モード)はCメジャースケールの音を使います:
| コード | スケール | コードトーン以外の音(経過音) |
|---|---|---|
| Dm7 | D ドリアン | E(9th), G(11th), B(13th) |
| G7 | G ミクソリディアン | A(9th), C(11th), E(13th) |
| Cmaj7 | C メジャー | D(9th), F(11th), A(13th) |
実は、これら3つのスケールはすべて同じ7つの音(C, D, E, F, G, A, B)です。スタート地点が違うだけ。
つまり、コードトーンを意識しながらCメジャースケールを弾けば、自動的にコードに合ったスケールを弾いていることになります。「スケールの切り替え」は音を変えることではなく、意識するコードトーンを変えることです。
先ほどのコードトーンフレーズに経過音を加えたバージョンを聴いてみましょう:
各スケールのポジションはスケール表で確認できます。
ステップ3:V7 にテンションを加える
コードトーン + スケール(経過音)で弾けるようになったら、最後のステップです。II-V-I の中で最も変化をつけやすいのが V7(G7) です。
V7 はドミナントコードであり、テンション(緊張音)を加えることで解決感を強調できます。ここではオルタードテンションを使います。
コードトーンからテンションを見つける
新しいポジションを丸暗記する必要はありません。すでに見えているG7のコードトーンから指を半音ずらすだけでテンションが見つかります。
| テンション | 見つけ方 | 指板上の動き |
|---|---|---|
| b9(Ab) | ルートの半音上 | Gから1フレット上へ |
| #9(Bb) | 3rdの半音下 | Bから1フレット下へ |
| b5(Db) | 3rdの全音上 | Bから2フレット上へ |
| #5(Eb) | 5thの半音上 | Dから1フレット上へ |
次の指板図では、コードトーン(R, 3, b7)が強調表示されています。それ以外がオルタードテンションです。コードトーンとの位置関係を目で確認してみてください:
テンションの「着地先」を意識する
テンションは緊張を生む音です。その緊張は、次のCmaj7のコードトーンに解決することで意味を持ちます。
| テンション(G7alt) | → 解決先(Cmaj7) | 動き |
|---|---|---|
| b9(Ab) | 5th(G) | 半音下降 |
| #9(Bb) | R(C) | 全音上昇 |
| b5(Db) | 3rd(E) | 全音上昇 |
| #5(Eb) | 3rd(E) | 半音上昇 |
テンションを弾いたら、Cmaj7に移ったときにこれらの音に着地させましょう。「使いっぱなし」にならず、自然に聴こえます:
ステップ2のスケールフレーズと聴き比べてみてください。Dm7は同じですが、G7の部分でオルタードテンション(#5, #9, b9)が使われています。Cmaj7のE4に解決する瞬間の緊張→解決のコントラストが強くなっていることが聴き取れるはずです。
オルタードスケールの構成音やフレーズ例については、オルタードスケール入門でさらに詳しく解説しています。
まとめ
II-V-I のアドリブは、3段階で考えるとシンプルになります:
- コードトーンだけで弾く — 各コードの R, 3, 5, 7 を指板上で見つけ、コードチェンジごとに滑らかに繋ぐ
- スケールで隙間を埋める — コードトーンの間に経過音を入れる。II-V-I ではすべて同じ7音(Cメジャースケール)
- V7 にテンションを加える — コードトーンから半音ずらすだけでオルタードテンションが見つかる。次のコードのコードトーンに解決させる
まずはステップ1のコードトーンだけでII-V-Iを弾き通す練習から始めてみてください。コードトーンが体に入れば、スケールもテンションも自然と使えるようになります。


