キーを変えたい場面は、音楽をやっていれば何度でもやってきます。ボーカルの音域に合わせたいとき、セッションで「半音上で」と言われたとき、原曲キーが自分には高すぎるとき。
五線譜なら、音符の位置と調号を書き換えれば済みます。ではTAB譜はどうでしょうか。まずは手作業でのやり方を確認してから、それを自動化する方法を見ていきます。
手作業でTAB譜を移調する
原則:1フレット=半音
ギターの指板は、隣り合うフレットがちょうど半音の関係になっています。ということは、全部の音を同じ弦のまま同じフレット数だけずらせば、それが移調になります。全音上げたい(+2半音)なら、フレット番号にすべて +2 を足す。半音下げたいなら −1 を足す。それだけです。
下のTAB譜で、実際に動かして音を聴いてみてください。
どの音も同じ弦のまま、フレット番号に +2 を足すだけで移調できます。
+側に動かしているうちは、気持ちよく足し算が進みます。ところが −側に振ると、フレット番号が 0 を下回る音が出てきます。0フレットは開放弦、つまりナット(弦を支える上端の部品)の位置です。その先にフレットは存在しないので、同じ弦のままでは、この音はどうやっても押さえられません。
フレットが足りないときは、弦を乗り換える
ここが手作業の移調でいちばん面倒なところです。同じ弦で押さえられない音は、より太い弦(低音側の弦)の高いフレットに逃がします。ギターでは同じ高さの音が指板上の複数の場所に存在するので、その別の場所を使うわけです。
太い弦へ1本ずらすと、同じ音は5フレット上に来ます。ただし、2弦(B)と3弦(G)のあいだだけは4フレットです。ここだけチューニングの間隔が違う(長3度)ためで、うっかりすると半音ずれた譜面ができあがります。
太い弦へ1本ずらすと、同じ音は 5フレット上(+5)。ただし2弦(B)と3弦(G)のあいだだけは +4 です。
たとえば「3弦0フレット(G)」を2半音下げたいとします。3弦のままでは −2フレットになって不可能ですが、4弦に乗り換えれば 0 + 5 = 5フレット、そこから2半音下げて 5 − 2 = 3フレット です。こうして「3弦0フレット」は「4弦3フレット」に書き換わります。
上へ移調するときは逆に、細い弦の高いフレットが足りなくなります。22フレットのネックなら、それより上には行けません。
コードは、平行移動できるものとできないものがある
単音のメロディなら以上でおしまいですが、コードが入ると話が変わります。
バレーコード(人差し指で全弦を押さえる、開放弦を使わない形)は、そのまま平行移動できます。Fの形を2フレット上げればGです。ここは楽なところです。
やっかいなのはオープンコードです。C や G や Am のような、開放弦を含む押さえ方は、指板を平行移動できません。開放弦は「0フレット」に固定されていて、一緒にスライドしてくれないからです。C の形を2フレット上げても D にはならず、まったく別の響きの何かになります。オープンコードを移調するには、移調先のキーで弾ける別のフォームを選び直すしかありません。
コードネームと調号も直す
TAB譜の上に書かれたコードネームも、すべて同じ半音数だけ動かします。Cmaj7 を+2半音するなら Dmaj7、Am7 なら Bm7 です。
このとき、♯と♭のどちらで書くかは移調先のキーに従います。C から半音上げた音は、C♯ ではなく D♭ と書くのが自然な場面が多く、6半音上げたなら F♯ になります。譜面の頭の調号も、移調先のキーのものに直します。
つまり、手作業では何をしているか
まとめると、TAB譜1枚を移調するのに、次の作業を全部の音について繰り返すことになります。
- すべてのフレット番号に、移調する半音数を足す
- 0を下回った音・最終フレットを超えた音を見つけ、+5(B–G間は+4)の対応表を使って別の弦に書き換える
- オープンコードは、移調先のキーで押さえられる別のフォームを探して置き換える
- コードネームをすべて読み替え、♯/♭の表記を移調先のキーに合わせる
- 調号を書き換える
4小節ならまだしも、1曲分となると相当な作業量です。しかも 2 と 3 は単純作業ではなく、そのつど指板と相談する必要があります。
notave の移調機能なら、これが1操作で済みます
notave の 移調機能 は、いま挙げた1〜5をまとめて引き受けます。半音数を指定するだけで、シート全体の 音符・コードネーム・調号 が移調され、TAB譜の運指も自動で追従します。
使い方
シート設定バーを開くと、調号ボタンの並びに 「移調…」 があります。クリックするとダイアログが開くので、±ボタンで半音数を指定して(全音上げなら +2、半音下げなら −1)、「移調する」 を押すだけです。
移調後の調号は「調号: C → D」のようにその場でプレビューされるので、押す前に結果を確認できます。指定できる範囲は −11〜+11半音です。
実際に C メジャーの進行を +2半音(全音上)へ移調すると、こうなります。
コードは Cmaj7 → Dmaj7、Am7 → Bm7 と読み替えられ、調号も♯2つの D メジャーに変わり、TAB譜のフレットもすべて2つずつ動いています。手作業の 1・4・5 が、ボタン1つで終わっているわけです。
面倒な 2 と 3 も自動で
フレットが足りなくなったとき(手作業の 2)は、notave が近くの弦へ振り替えます。先ほどの+5/+4の対応表を、そのつど内部で計算してくれると考えてください。
コードが平行移動できないとき(手作業の 3)は、移調後のコードのボイシング候補から、元の形に近いものを選び直します。Drop2 は Drop2 のまま、というように同系統のフォームが優先されるので、響きの性格が変わりにくくなっています。
それでも楽器の音域外になる音がひとつでもある場合は、移調は実行されず、エラーが表示されます。譜面の一部だけが移調された中途半端な状態にはならないので、移調量を変えるか、チューニングを見直してから試し直してください。
ひとつだけ注意点があります。移調は「元に戻す」(Ctrl+Z) の 対象外 です。逆方向に同じ半音数だけ移調すればキーとコードネームは元に戻りますが、移調で形が変わったコードのボイシングまでは戻りません。元の譜面を残しておきたいときは、移調前にファイルへ保存しておくと安心です。
こんな場面で使えます
いちばん多いのは、歌う人のキーに合わせるケースでしょう。弾き語りでもバンドでも、原曲キーが高すぎたり低すぎたりするときは、歌いやすい高さまで半音単位で動かします。どれだけ動かすか決めていないときは、−2 あたりから試して、歌いながら ±1 ずつ調整するのがおすすめです。ダイアログは何度でも開き直せます。
セッションやリハーサルで 急にキーが変わったときにも役立ちます。「半音上で」「1音下げで」といった注文に、その場で譜面を作り直して応えられますし、コードネームも一緒に書き換わるので、そのままメンバーに共有リンクを送れます。
サックスやトランペットが入ると、曲がフラット系のキー(F・B♭・E♭)に寄ることがよくあります。普段弾き慣れないキーでも、譜面ごと移調してしまえば運指は notave が計算してくれます。
練習用途にも使えます。ジャズの定番である「同じフレーズを12キーで回す」練習は、+1 ずつ移調していくだけで全キーのTAB譜が手に入ります。高くて歌えない曲を一時的に下げて練習し、慣れたら原キーに戻す、といった使い方も手軽です。
移調・カポ・チューニング、どれを使う?
notave にはチューニングとカポの設定もあります。どれもキーに関わりますが、役割は違います。
| やりたいこと | 使う機能 |
|---|---|
| 譜面そのものを別のキーに書き換えたい | 移調 |
| いまの運指・開放弦の響きのまま、鳴る音だけ上げたい | カポ |
| 半音下げなどの変則チューニングで弾きたい | チューニング設定 |
判断の目安は「譜面を書き換えたいのか、鳴る音を変えたいのか」です。歌い手に合わせてコード進行ごと別キーの譜面を作るなら移調、開放弦の響きを保ったままキーだけ上げたいならカポ、ということになります。カポは、まさに「オープンコードが平行移動できない」問題を、指板の側をずらすことで回避する道具でもあります。
無料で使えます
移調機能は無料で利用できます。ログインも不要で、notave を開けばすぐに試せます。無料プランの譜面は8小節まで(Pro プランで無制限)ですが、移調機能自体にプランによる違いはありません。
まとめ
TAB譜の移調は、原理としては「フレット番号に半音数を足す」だけです。ただし実際には、フレットが足りない音の弦の乗り換え、オープンコードの置き換え、コードネームと調号の書き換えがついてまわります。
notave の移調機能は、その全部をまとめて片づけます。
- シート設定の 「移調…」 から、半音単位でシート全体を移調
- 音符・コードネーム・調号 がまとめて動き、運指も自動で追従
- 指板から外れるコードは、近い形へ自動で再ボイシング
歌う人に合わせるときも、セッションで急にキーが変わったときも、ダイアログで ± を押すだけです。notave.zelva.dev なら、登録もインストールも不要で今すぐ試せます。
TAB譜づくりの基本は TAB譜作成ガイド、TAB譜の読み方そのものは TAB譜の読み方入門、全機能の一覧は 操作マニュアル をあわせてご覧ください。


